中堅企業IT部門の日常

中堅企業IT部門の中間管理職で半研究者の雑談です。毎週火曜日更新予定

理系の子 才能か環境か

 今更ですが、『理系の子』読みました。今更ですが、面白いです。

 

理系の子―高校生科学オリンピックの青春

理系の子―高校生科学オリンピックの青春

 

 

 内容は、学生科学フェアに参加する子供達を追ったサイエンスノンフィクションの書籍です。

 

 この学生科学フェアというのが、単なる学生の自由研究と思ったら大違いで、地域ごとに多数のフェアが存在しており、その頂点にはインテルが協賛する、インテル国際学生科学フェア(ISEF)なるものが存在し、その賞金総額は3億円を超えます。

 

 ISEFに参加するために、各地の科学フェアを勝ち進む必要があり、全世界からISEFに参加できるのは、1500人程度です。まさに科学甲子園みたいなものです。ただし、高額賞金付きの。

 

 この本はこのISEFに参加している子供達を取材し、科学研究の内容だけでなく、その子供達の背景を追い、なぜ研究を始めたか、科学が彼らにどういった意味を持つのかも含め述べられています。

  

ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った (ノンフィクション単行本)

 

 ここでも紹介されているのですが、とにかく出てくる子供のスケールが違うというかなんというか。

 

 例えば、最初の話は、祖母から与えられた本がきっかけで核融合に魅入られた少年が、父親にガイガーカウンターをせびり、それを使って放射性物質を集めだします。 大学生や大学教授に指導を受けられるという幸運に恵まれ最後には、とうとう核融合炉を完成させてしまいます。

 

 他にもハンセン病にかかった中学生の少女が、自分を媒体にハンセン病の研究を行い、ハンセン病への偏見をなくすような取組みを行ったり、フォードのモデルをやっている高校生が、ミツバチ研究を行い、徐々に科学に興味を持っていく話等々、常識外れのずば抜けた子供達が紹介されています。

 

 ただ、ここに出てくる子供達は、みな生まれながらの天才というわけでもなく、小さいころから科学に没頭していた子供ばかりというわけでもありません。例えば、アメリカ先住民の子供が、貧しい生活の中、大学の学費を稼ぐため、そして、寒さをしのぐために、太陽光を暖房として活用する研究し始めたりします。この少年は、特に科学に興味があったわけではなく、生活上の必要に迫られて研究を始めています。

 

 実際、紹介されている半分くらいは、生活に迫られ、必要に迫られ サイエンスフェアへの参加を検討し成長してから研究を始めており、幼少期から才能を輝かせていたケースばかりではありません。

 

 この点は大変興味深く、才能を見せる子供達は、必ずしも持って生まれた才能が初めから勝手に表出しているケースばかりでなく、後天的に環境に影響されて才能を開花させているケースも多く見て取れます(そういった事例を中心に集めたのかもしれませんが)。

 

 別に、”努力すれば、夢はかなう!”的なことが言いたいわけではなく、才能が現れるのには周りの環境は大きく影響する、ということが良く分かります。

 

 ちなみに、天才は遺伝と環境の両面から影響を受けているという主張は、この書籍にも書かれてます。

 

天才を考察する: 「生まれか育ちか」論の嘘と本当

 

『理系の子』では、子供の才能を伸ばすには、まわりの環境的な要因が大きく影響することが、見てとれるのですが、この環境を作り出しているのは多くの場合、親です。

 

 文字がタブレットに表示される手袋を開発した子供には、才能の片りんが見えた際に、親が地域の中に国立研究所を退職した老物理学者を見つけ出し、息子の指導を直談判します。そして、その子供はこの老物理学者からレクチャーを受けることで、更に才能が伸び、最終的にはサイエンスフェアで42万ドル以上を稼いだ伝説の人となります。

  

 また、第2のビルゲイツと呼ばれる少年の親は、都会での暮らしをすて田舎に農場を買い、そこで自宅学習で子供を教育します。その中で、”クモン”(恐らく日本で有名なあのクモン)を見に行ったりするのですが、課題を与えてやらせる学習法を違うんじゃないかといって否定しているところがちょっと笑えます。

 

 ただ、どの親も強制ではなく、本人のやりたいという意思をうまくサポートそて環境を整えているのが特徴です。まあ、「やりたいことをやりなさい」といって、ゲームや漫画を読むのではなく、電気工学の本を読みふけるあたり、そもそも何か違うのかもしれませんが。

 

 子供を持つ親の視点から見ても大変勉強になる一冊です。本当に子供がやりたいことを見つけて、サポートすることの大切さがわかります。

 

 また、子供をスーパー科学者にしたい人にもいいかもしれません。小学生・中学生くらいならまだまだ間に合うかも(?)

 

理系の子―高校生科学オリンピックの青春

 

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