プロジェクトの成功をどうやって測るかを決めたら、次に知りたくなるのは、どうやったらプロジェクトが成功するのかその要因です。「成功要因」ってやつです。
世にあふれる「成功要因」なんてのは、かなり眉唾なのですが、研究分野では真剣に研究している人々は多々います。
内容としては、プロジェクトの成功度合いが数値化されているので、それをより高くするパラメータを探し出せばよいということで、いろんな切り口から研究されています。
例えば、2004年の研究で、『Factors infuluencing project success: the impact of human resource management』(PROJECT MANGEMENT)というのを簡単に紹介しますと、こちらは、人材リソースの管理面から考えた際に、どういった要素がプロジェクトの成功に影響を与えるかを検証しています。
(ちなみに、この研究は業界的に有名というわけではありません。たまたま手元にあったもので)
プロジェクトの成功につながるのではないかという要因を9抽出し、それらがどのように相関するかをアンケートで検証しています。
例えば、
- Project Mission:プロジェクトの方向性と目的についての初期段階での明確さ
- Project Schedule:プロジェクトの実装に必要な、個々人のアクションステップの詳細
- Communication:すべてのメンバーとのコミュニケーション、コンサルテーション
- Technical Tasks: 特定の技術的にアクションを行う際に必要な、技術と知識の利用可能性
- …
などが挙げられており、これらをアンケートで7段階で評価で聞いています。これらの9要素をプロジェクトのライフサイクル(開始時点、計画時点、実行時点、完了時点)別に聞いており、9要素とライフサイクルが、プロジェクトの成功にどう相関するかを分析しています。
結果としては、142の企業からアンケートを回収しており、9要素はプロジェクトのライフサイクルによって、その相関度合いが異なることを示しています。
例えば、Project Scheduleは、プロジェクトの計画時・実行時にプロジェクトの成功への相関がみられますが、特に実行時に強くなります。また、人員(採用やトレーニング)は、計画段階では相関が見られないものの、実行時に相関が大きくなるなどが挙げられています。
結果は、経験あるプロジェクトマネージャーなら、まあそうだよねといった内容かと。
ちなみに、この手の研究は、数多く行われており、多くが、要素を出す→アンケートを取る→相関を見るといった手法で行われています。
ただ、正直この手の研究はいろいろと突っ込みどころ満載で、例えば、
・適切な対象に適切に聞いているか?
アンケートの回答者が本当に適切な人材か?サブチームのPMにプロジェクト全体について聞いていないか?といった疑問があります。また、 7段階(そう思う、強くそう思う等)は、ばらつきがでてしまうことが懸念されます。
・相関は言えるが因果関係は言えていない
多くの研究は、相関があるとは言っていますが、因果関係があるとは言っていません。もしかすると、コミュニケーションが良いからプロジェクトが成功したのではなく、プロジェクトがうまくいっているからコミュニケーションもうまくいっているのかもしれません。なので、「成功要因」とは一概に言いにくい状況にあります。
こういったいろいろな突っ込みどころを、研究論文はきちっと「ここは突っ込みどころです。今後研究が必要です」とか、書いています。また、特に適用範囲が記載されており、「大企業ITのパッケージ導入プロジェクト」など、この相関が出た範囲が明記されています。
研究では、結構気を使っているのですが、これが一般書籍になると、「成功要因」として引用されていたりします。
長々と書いてきましたが、結局、一般に使える「成功要因」なんてのは、なかなかないうことです。なので、「成功要因」なんて言ってくるコンサルタントにはご注意を。
プロジェクトの成功評価からだいぶずれた内容に流れてきましたが、この話題はこの辺で。