中堅企業IT部門の日常

中堅企業IT部門の中間管理職で半研究者の雑談です。毎週火曜日更新予定

村で育ちの高齢者が経営する日本企業

さて、前回紹介しましたが、政府で「未来会議」なるものが開かれ日本の成長戦略について議論されています。また、そこから出た主要4テーマについて「構造改革徹底推進会合」が個別に設置され議論が進められています。

 

前回に引き続き、この資料の内容についてです。

「我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題」

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo_saihen_dai2/siryou4.pdf

 

社長になれるのは60歳超えてから

この資料では、前半では日本企業の収益性が低い状況が示されています。そちらは前回参照のこと。

blog.sme-itdept.com

 

そして後半では、収益性が低い一因として経営者に焦点が当てられいます。p.21には、就任するCEOの平均年齢が地域別に提示されています。

2014年の調査データですが、

  • 米国/カナダ:52歳
  • 西欧:51歳
  • 中国:52歳

と、海外では50代前半が主流であるのに対して、なんと日本は62歳! 

諸外国に比べて圧倒的に高齢です。

22歳から務めて40年するとようやく社長になれるかもしれません。一昔前なら62歳となるともう引退している年代です。

 

「今のシニアは若いし、社長の良し悪しは年で決まらない」

などというコメントもあるかもしれませんが、年齢とともにリスクテイクする傾向が減るというのは研究でも良く言われていることです。そりゃイノベーションも起きないわ、といった状況です。

 

村から出たことがない経営者たち

さらに問題なのは、日本村から出たことがない経営者ばかりです。

例えば、就任したCEOの国際経験について

(本社と異なる地域での職務経験ありの割合)

  • 米国・カナダ:76%
  • 西欧:47%
  • 世界平均:67%

に対して、わずか日本は17%です。日本村から出たことのないCEOばかりです。ちなみに、日本より低いのは中国0%のみです。

 

また、日本村どころか、自分の企業すらでたことのないCEOも大量です。

就任したCEOの他企業での経験

(経験ありの割合)

  • 米国・カナダ:86%
  • 西欧:88%
  • 中国:93%

日本は、これまたわずか25%!です。中国以下です。中国はさまざまな規制もあり、海外に出ることは難しいのかもしれませんが、国内では複数企業を渡り歩いてます。

 

日本のCEOというのは、日本村で育ち、自分の家から一歩もでたことのない人が大半という状況です。ちょっとした引きこもりみたいなものです。

 

外の血を入れるなんてもってのほか

最近は国際化も進んでいるので、引き込もりだけでは不安です。そうならば、適した外部人材を呼んでくるのも一つの手です。では、日本企業は外部から経営者をどの程度呼んできているかといえば

 

こちらによると、

「2015年世界の上場企業上位 2,500社に対するCEO承継調査結果概要」strategy&

http://www.strategyand.pwc.com/media/file/2015_CEO-Data-Media-release-JP.pdf

(外部招聘CEOの割合(本社所在地域別、2004-2015))

  • 米国/カナダ:18%
  • 西欧:30%
  • 中国:17%
  • 世界平均:24%

日本は、4%!

圧倒的な最下位(?トップ?)です。うーん、日本企業は社内に人材があふれており、外部招聘なんて必要ないということでしょうか。

 

村社会から高収益なビジネスはうまれるのか

日本の経営者は、62歳平均で、海外経験なし、他の会社の経験もなしという、おらが会社一筋です。そして経営層に外部の血を入れるなんてのは、もってのほかという。

 

レポートでは、課題として次のようにまとめられています。

日本企業の構造的な経営課題の解決
 サラリーマン共同体至上主義の「ムラの空気のガバナンス」から徹底的に脱却(≒あえてKYな社外取の重要性)
鍵はトップ人事の客観化、透明化(≒OBガバナンスの排除)、社外の目(≒社外取の目)の有効活用

 

また、日米の経営課題の差として、

日本:

サラリーマンのムラ型ガバナンスによる意思決定の機能不全(不作為)
ーサラリーマン的な近視眼は問題先送り

ー収益率の低迷、「稼ぐ力」の強化
=アップサイド

アメリカ:

ー強力な権限を持つCEOの暴走(作為)
ー短期株主的な利益先喰い
ー不祥事や強引な意思決定の抑止
=ダウンサイド

とも述べられています。

 

つまり、村社会の経営者によって、村の秩序を守ることに注力が置かれ、リスクを取らないというのが問題と言っています。今や、既存の延長でビジネスが成長できる時代は終わっています。企業を安定化させるのと同時に、リスクを取ってチャレンジしていくことが必要です。

今、日経平均も上昇し、企業も好業績なのかもしれません。しかし、こういった状況に安住し、同じような人事を行っていけば、国際競争力をさらに失っていくのではないかと、本当に心配になります。

日本経済が好調な今にこを、企業は挑戦し、若くリスクを取る人材を経営層に据え、新たな高収益ビジネスを生み出していく必要があるのではないでしょうか。

 

ほんと日本企業に勤めていると不安になってきました。

 

(どうやったら出世できるかを知りたい方はこちらをどうぞ。間違ってもリーダーシップ研修などにお金を払わないように。)

悪いヤツほど出世する

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