未来投資会議という日本経済再生本部が管轄する会議があります。議長は内閣総理大臣で、日本の成長戦略を考えるというものです。
過去日本の成長戦略を国も検討してきましたが、それをさらに進める司令塔として「未来会議」が設置され、特に主要な4分野について「構造改革徹底推進会合」が設置され、個別に検討されているようです。4分野は次の通りです。
- 第4次産業革命(Society 5.0)・イノベーション
- 企業関連制度改革・産業構造改革(長期投資と大胆な再編を促進)
- 医療・介護(生活者の暮らしを豊かに)
- ローカルアベノミクス(農業、観光、スポーツ、中小企業等)の深化
このうち「企業関連制度改革・産業構造改革」で取り扱われている内容が本日のお話です。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/index.html#suishinkaigo
稼ぐ力の弱い日本企業
この会合のメンバーには、冨山和彦さんが入っています。この方は、コンサルティング会社のBCGにちょっといて、CDIの立ち上げを行った人です。今もコンサルタントとして活躍中です。
さて、この方が出した資料がこちら。
「我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo_saihen_dai2/siryou4.pdf
日本企業のコーポレートガバナンスにおける課題をまとめた資料です。
まずp.5に地域別のROEの分析が載っています。ROEは、デュポン式の分析を行うと、売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3つの要素に分割できます。
それらを分析した結果がこちらになります。
(出所:「我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題」株式会社経営共創基盤 冨山和彦)
まず、右端の財務レバレッジは、自己資本比率の逆数であり、借入を増やせば増やすほど、自己資本を減らせば減らすほど上昇します。日本の企業は他地域に比べて低めの値です。他地域に比べ借金が少なく、自己資本で投資をまかなっている傾向が強いといえます。
財務レバレッジが低いのは安全性が高いとも言えますが、リスクを取っておらす資本コストが高くついているともいえます。まあ、日本的な感じです。
一方、総資産回転率は、他地域よりも高い値を示しています。この値は、自社の資産からいかに効率的に売り上げを上げているかを表しています。効率性が高いのは日本のお家芸なのかもしれません。
財務レバレッジ、総資産回転率については、正直微妙な差ではあります。むしろ問題なのは、売上高純利益率です。他地域に比べて圧倒的に低い値となっています。半分以下です。
日本は3.3%、米国8.3%、欧州7.2%と圧倒的な差がついています。この資料にはこれ以上の詳細はないのですが、人件費等の固定費が高いなどの理由が想像できます。
日本企業は、安全性、効率性は比較的高いものの、収益性が圧倒的に低いのが現状です。
存在感が薄れる日本企業
さて資料では個別業界、企業にフォーカスが移っています。
たとえば、p.12では、Li-Ion電池や、DRAMといった分野で世界市場の伸びと日本の占有率の比較を行っています。世界市場が伸びる一方で、日本企業の占有率が下がっています。
(出所:「我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題」株式会社経営共創基盤 冨山和彦)
さらにp.13では、総合家電メーカがことごとく利益率を低下させているのが提示されています。
(出所:「我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題」株式会社経営共創基盤 冨山和彦)
ソニーにいたっては、30年でなんと10%も利益率が低下しています。
規模を拡大するにつれ、収益を低下させていく日本企業。高利益率の市場に早期参入し人をたくさん抱え、設備投資したにも関わらず、その後競争環境は悪化り、かといって業態転換できず、ずぶずぶと利益率を下げていく、そんな構図が目に浮かびます。
さてこの低収益の原因ですが、この資料では、その一因として経営者に焦点があてられています。
つづく
(冨山さんの書籍です。)