世界ではクラウドソーシング、労働市場として確立されているという話の続きです。
(前回はこちら)
日本のクラウドソーシング市場
日本のクラウドソーシングもそれなりにがんばってます。クラウドワークスは2014年に上場し、2016年にはワーカー100万人に達しています。
ただ、Upwork, Freelancer.comなどの海外サイトに比べると桁が一桁違います。日本のクラウドソーシングは日本語限定ということもあり、どうしても規模が小さくなってしまうのが実情です。
規模が小さいのも問題ですが、それ以上に気になるのが、日本のクラウドソーシングの取り上げられ方です。
海外では、「ウクライナのエンジニアが人気」とか、「東アジア圏でのヴァーチャルアシスタントの需要が伸びている」など、一般的な仕事をやりとりする場として認識されています。
しかしながら、日本のクラウドソーシングは、WELQの例をはじめとして、「安い単価で単純作業を依頼する」場として認識されています。
実際、クラウドソーシングで単純作業と依頼するタスク型という仕組みでは、多くのワーカーが働いています。
タスク型は手数料が0ということもあり、企業も多数の依頼を行っています。(ちなみに、一般的な仕事を依頼するプロジェクト型の手数料は20%(仕事の金額によって減額される))
結局、クラウドソーシングは、「アンケートに答えていくら」といったアンケートサイトとあまり変わらず、「単なる小遣い稼ぎ」として認識されている傾向があります。
「働ければそんなのどっちでもいいじゃないか」という意見もあるかと思いますが、問題なのは、このタスク型の仕事、ほとんどがAIで代替されるような仕事ばかりです。
WELQの件も今回は人に記事を作っていましたが、もう少しすれば、AIが自動的にまとめ記事を書くことも可能になるでしょう。
そうなると、タスク型のクラウドソーシングばかりはやっているようでは、この先の成長は期待できないでしょう。また、こういった市場で働くワーカーはAIに勝てるだけのスキルが身につくわけでもなく、早晩にAIに代替されてしまう可能性があります。
こうなると、日本のフリーランスは生き残っていけるのか不安になります。
海外同様に、単純作業だけでなく、一般的な仕事が多く流通する市場にクラウドソーシングを変えていく必要があるかと思います。
トランプは怒るのだろうか
話は変わりますが、Upworkにおいて、ウクライナに仕事を出している主要な国の一つが米国です。
また、ウクライナだけでなく米国は、Upworkでの仕事発注元のトップ3に入っています。つまり、米国人のクライアントが海外のワーカーを雇用しているのです。
さて、これは明らかに米国の雇用が奪われていることになります。国内の雇用を推進するトランプ政権にとっては、クラウドソーシングも敵になるのでしょうか?クラウドソーシング上で、米国人は米国内にしか発注できないとかなると、多くの企業、特にスタートアップが困ることでしょう。
日本は、このタイミングに積極的にクラウドソーシングを利用し、ウクライナをはじめとした、コストが安く、高度な人材がいる国に仕事を依頼することで、企業の競争力を増すことができるかもしれません。
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