ベンダーから提示される見積りについて少々。
ユーザー企業システム部門の一番大きな仕事は、やはりベンダーとの交渉だと思います。
特に、価格交渉はタフな仕事で、ただ安くすればよいというわけでなく質も良く、価格も適正なところで、まとめることが重要です。
億単位の開発費が飛んでく、大きなプロジェクト(中小・中堅には大事です)では、出てきた見積りを一つ一つ吟味し、時間をかけて交渉して、まあ、納得いくところで妥結します。その際は、相見積りを取る、過去の類似実績を参照する、工数で積み上げてみる等々、様々な情報を加味して検討します。
しかしながら、こういった大きなプロジェクトで途中の追加改修などが発生すると、その際のコストは結構めくらばんになってしまいます。
たとえば、「帳票追加1件、200万円」とか出されると、「バカヤロー高い!」とか条件反射してしまい、最終的に「わかりました、150万円で。これぎりぎりです」とか、いう流れで落ち着いたりします。
150万円に下がった(25%引き)ということで、なんとなく納得してしまうのですが、そもそも、200万円という数値にアンカリングされてしまっているような気がします。
アンカリングとは、ある未知の数値を見積もる前に、何等かの特定の数値を示されると、その数値に引っ張られるという効果です。
こちらに詳しく書いてあるのでよければご参照ください。
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例えば、タンカーの原油流出事故による海鳥の被害に対する寄付を募る際に
「5ドル以上寄付するつもりはありますか」
「400ドル以上寄付するつもりはありますか」
という2種類の質問を行うと、前者の質問を行った場合の解答は、平均20ドルになるのに対し、後者は、平均143ドルとなる。
このように、最初に数値を見せられるをそれに引っ張られる効果が発生します。
まあ、ベンダーの見積りもある程度行くと、未知な数値になるケースもあり、適当に吹っかけられても、なんとなく、高い、安いしか言えないことも多々あります。
そういう状況では、先にアンカーを打つ(価格を先に言う)もしくは、交渉の席を立つというのが有効らしいです。
システム開発の場合、交渉を立つというのも難しいので、最初にアンカリングをするようにはしています。「100万円くらいしか払えないけどね」。ただこれも、それなりのリスクがあり、例えば、あまりに低い価格を提示してしまうと、提案してこないとか、本気の提案をしないなどの結果になります。
良く大手ベンダーの見積りは、いつもあまりにも高く、結局交渉して2割、3割引き当たり前になります。ユーザーとしては、「XXX社の最初の見積りは、全くあてになんないよな。たたいて、30%ひかせたよ」とか得意げになっているのですが、実は、周到に計画されアンカリングされているのかもしれません。恐るべし大手ベンダー。。。