中堅企業IT部門の日常

中堅企業IT部門の中間管理職で半研究者の雑談です。毎週火曜日更新予定

家庭の学力スパイラル

GWに書店で平積みになってたので、軽い気持ちで読んだ書籍がこちら 

下剋上受験-両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した!

下剋上受験-両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した!

 

父と娘が、女子中学No.1の桜蔭中学校をめざすというお受験の話。

ただ、お金持ちの家庭でこんな勉強したら受かりました、というありがちな話ではなく、父母、祖父母まで、代々続く「中卒」の家庭で、その流れを打ち切ろうと奮闘するお父さんの話です。

中学受験のエッセンス的なものもありますが、40過ぎたおじさんの苦闘成功記ということでも十分感動できる内容です。

流路変更

まずこのお父さんは、川の流路変更に例えて自分達の家庭の学歴を変更することを決心します。

結局、妻を無視し、私は決心した。
「流路変更工事しかない」
「絶対にこの流れを堰き止める」
「中卒は俺の代までだ」

 「中卒」家庭からから娘をトップ校に、まさに「下剋上」を起こすために、父と娘の受験勉強がスタートします。

 

「中卒」という環境

本書では、「中卒」の家庭からどれだけ中学受験するのが大変かということが、これでもかと書かれています。

自分は家庭が「中卒」というわけではなかったので、全く気づきませんでしたが、確かにこれは一般的な「高卒」「大卒」の家庭とは違います。

 

夫婦喧嘩をした際に、

(夫婦喧嘩のなかで)4分の3と5分の4って、どっちが大きいか言ってみろよ

といって、奥さんが黙り込んでしまいます。

 

さらには、「渋滞5km」という高速の表示を見て、奥さんが携帯見ながら「電波十分はいっているけどね」といったことを言うくだりもあったりします(渋滞を「ケイタイ」と読んでしまっている)。正直、想定外の会話です。

 

また、大学受験参考書には当たりまえに出てくる、行を現す”l(英語小文字のエル)"の意味が分からず苦労したります。

この「ℓ 36」は、著者にとっては常識なのだろう。また大卒の親にとっても常識なのだろう。しかし、中卒の私の場合はどこにもこの説明が書いていないために延々と悩み、時間ばかりが過ぎていく。「36行目」と一度だけでも注意書きをしてくれるだけでずいぶん楽になるのだが、そういう親がいるということはまったく想定外なのだろう。

普段当たり前だと思っていることがそうではないということに衝撃を受けます。

正直、子供の能力に親の学歴なんか関係ないと思っていましたが、確かにこういった環境の中だと子供にも差がでてくるかもしれません。

 

環境と子供の能力

以前こちらでも書きましたが、子供の能力は遺伝なのか環境なのか、言い切ることはできないようです。

ただ、環境の影響はそれなりに大きいようで、確かに中学受験レベルでは大きく家庭環境に左右されそうです。

例えば、中学受験にはかなり難易度の高い言葉がでてきます。

なるほど、この文章は読めないだろう。そりゃそうだ。知らない語彙が多すぎる。そこで一緒に知らない語彙を蛍光ペンで塗っていった。
生ずる。風土。おこぼれにあずかる。宿る。制御。霊魂。自然観。狩猟採集民。征服。自我。意のまま。考慮。ギャップ。因果関係。観念。同化。コントロール。アミニズム。真理。思考パタン。律する。聖職者集団。革新。付随。(デイリーサピックス 基礎と実践29より)

確かにこういった言葉は小学生にとってはなじみのない言葉です。大人が使わなければまず子供は知りません。

家庭で親がそれなりの教養を持ち自然と使っている、そんな家庭であれば、子供も語彙力があがるかもしれません。でも、ふつうの家庭ではこんな言葉は使いません。

これは語彙だけでなく、物の考え方や、知識量そういったものが、家庭環境によって少しずつ違っているのかもしれません。それは小さな差ですが、何年もかけて大きな差になり、埋められない決定的な学歴差につながるのかもしれません。

そして、子供の代も同じことが繰り返され、「大卒」家庭はプラスのスパイラルに、「中卒」家庭はマイナスのスパイラルに入っていくのかもしれません。

 

つづく

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