一時期の不景気もあり、日本の企業はどこも社員を絞り、少ない人数で社員をフル回転し会社を運営しています。一方でここ数年景気が良くなっていることもあり、さらに社員は忙しくなり、社員をこき使うのも極限までにきている感があります。
企業はいかに社員を効果的に回転させるかに注力していますが、そもそもそんなに社員をフル回転させることが本当に企業にとってプラスなのかという話です。
Organizational Citizenship Behavior
1980年代から90年代にかけて米国を中心に研究されたトピックとして、
Organizational Citizenship Behavior(OCB)といものがあります。日本語に訳すと、
「組織市民行動」と呼ばれます(よく分からない日本語になるのでOCBとします。)
OCBとは
自由裁量的 で,公式的な報酬体系では直接的ないし明示的に は認識されないものであるが,それが集積するこ とで組織の効率的および友好的機能を促進する個 人的行動
と定義されます。なんかわかったようなわからないような定義ですが、簡単に言うと、「仕事の三遊間のゴロを拾う」とか「ポテンヒットになりそうな球を追いかける」といったことを通じて組織内の関係を良くする行動のことです。もっとわかりずらい?
例えば、「新しく入社した他部署の人が、社内システムの使い方がわからず困っているので教えてあげるとか」とか、「自分の業務範囲かどうかわからない新規事業案件を率先して進める」など、本来の自分の仕事ではないが、会社のためになることを率先して行うことを指します。
基本的には、会社の業務として規程されているわけではないので、評価されるかどうかもわからないという行動です。
通常、企業は三遊間のごろで溢れています。各社の職務分掌を見ればわかると思いますが、すごく大ざっぱに書いてあります。
職務分掌を見て自分の業務をすべて定義するのはかなり困難です。また、企業の業務範囲は常に流動的に変動しており、新しい業務が増えていきます。なので、根本的に職務分掌で従業員が行うことを明記するのは無理です。
日本では当たり前のこと
Organらの書籍では、
- 作者: デニスオーガン,スコットマッケンジー,フィリップポザコフ,Dennis W. Organ,Scott B. MacKenzie,Philip M. Podsakoff,上田泰
- 出版社/メーカー: 白桃書房
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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最初に「親切なサム」という題名で、若かりし著者がアルバイトした時に困っていると熟練した社員が手伝ってくれたという話しがでてきます。
その社員は著者を助けることで彼の評価が上がるわけでもなく、著者が失敗したとしても彼の評価が下がるわけでもありません。では、なぜ助けてくれたのか、ということに著者は疑問を持ちます。
本書では、そういった導入のもと、「仕事の三遊間のゴロを拾う」研究が続いていきます。
でも、こんなの日本では当たりまえです。他の部署の人間で、自分には何の責任がなかったとしても、多くの人は困っていたら助けてあげます。
「てやんでぇ、しょうがねえなあ」
といった感じです。
「隣の部署の人間が困っていたら助ける」、「自分が暇なときに同僚が忙しそうなら手伝う」といったことは、企業で勤める人にとってみれば何を当たり前のことを
と感じるのではないのでしょうか?
こういった日本では当たり前の行動も、海外の人にとっては不思議な行動だったようです。そして、1980年代の日本の急成長を目の当たりにした、米国の研究者はこの行動に日本の強さを感じたのかもしれません。
その結果、海外ではこのOCBについて多くの研究がなされています。
- どういったときに、こういったOCBが発生しやすいのか?
- OCBは企業にとってプラスの行動なのか?
こういった点について多くの調査が存在しています。
(ちなみに、日本での研究は少ないようです。)
続く。。。
- 作者: 中原淳,木村充,重田勝介,舘野泰一,伊勢坊綾,脇本健弘,吉村春美,関根雅泰,福山佑樹,伊澤莉瑛,島田徳子
- 出版社/メーカー: 生産性出版
- 発売日: 2012/03/20
- メディア: 単行本
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