過労死問題を発端として、最近は労働時間の制限が急激に進んでいます。
聞いた話では、某IT企業でも労働時間の制約が厳しくなっており、規定の残業時間をオーバーすると強制的に会社を退去させられるそうです。
新サービスのカットオーバーが2時間後といった状況のさなか、残業時間オーバーで退去させられたそうです。新サービスは果たしてうごいたのかどうか…
労働時間は制約される
労働時間の制限が強くなってきています。
80時間を超えると、会社名を公表されるらしいです。(いくつか条件があります)
また、残業時間の上限を年間720時間(月平均60時間)とする案も検討されています。
残業月平均60時間となると、一日3時間残業×20日で60時間です。例えば、平日朝9時に出社して、夜9時に退社すれば、60時間に達します。システム開発などではあっという間に超えてしまいそうです。
こういった取組み対して、企業はおおっぴらに反論できません。それこそ、残業無制限など主張すれば一発ブラック認定です。
とは言え、単に時間を制約することにはささやかな反論もあり、
- 時間の問題ではない、単位時間あたりの効率を上げることが重要。無駄な会議、無駄な仕事を見直すところが重要
- 前向きに働きたいという人を制限しては、人材が成長しなくなる。前向きな残業と、後ろ向きな残業は分けるべき
といった意見があります。業務の時間ではなく、業務の内容や質が問題だという意見です。
例えば、仕事に没頭して時間を経つのを忘れるなどということがあります。フロー体験のような状況で、長時間労働するのは、一概に悪いとも言い切れないような気もします。
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あと、外資系コンサルなんて、労働時間だけを見ればいまだに超ブラックです。深夜残業、徹夜もざらですし、深夜のメール攻撃も大量に行われているようです。
ただ、彼らは、その労働の先に高額な報酬が見込まれ、さらには輝かしいキャリアが見えているわけです。それを目指して働いているわけなので、これを一概に時間で切るのが良いのかは疑問です。
いつでも辞められるという環境
根本的には、時間という単一の軸では問題は解決しないような気がします。今、時間ばかりが注目されているのは、心理的な負荷を測る代替指標として、時間以外により良いものが見当たらないからです。
しかし、働き手の心理的な負担は時間だけでは、決まらないはずです。
むしろ、過労死をなくすためには、一個人が精神的・体力的な状況に応じて、働き方を選べる状況を作る必要があるのではないかと思います。
先日、フランス人の知り合いと話したら、過労死の意味が分からない言います。単純に
「そんなつらいならなぜやめないの」
ということだそうです。まさにその通りです。
たかが仕事なのです。
しかしながら、日本ではされど仕事なのです。
「この会社やめたら、今後キャリアはどうなるんだろう」
「これくらいでやめたら大学の同期からばかにされる」
「ここで逃げたらもう終わりだ」
など、考えてしまうのです。
おそらく、こういった発想が問題で、また、そういった発想をさせてしまう日本の労働市場が問題なのです。
つづく
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