IT部門にも毎年若い人が入ってきます。当然ITやりたくて入ってくる人はいないので、一から育成になります。育成するにあたっても、飲み込みの早い人とそうでない人の差は大きくて、特に物事を抽象化して考えたり、大きな視点で見ることができない人は苦労します。
ものの考え方と人材育成について、最近感じたことを3回くらい書いていきます。
価値を分解する
最近読んだちきりんさんの本
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こちらは、「マーケット感覚」について述べています。「マーケット感覚」は、「価値を認識する能力」とのことで、例えば航空会社の価値を考える事例が述べられています。
ANAの競合を考える際に単に航空会社と考えると、国内線ならJAL、ジェットスター等、国際線アメリカン航空、デルタ航空等、しか出てきません。
しかしながら、航空会社の価値を単に「飛行機での移動手段を提供する」だけでなく、幅広く「移動」と考えれば、新幹線、夜間バスなども競合になりえます。このように本来航空会社が持つ価値を広く認識すると、新たな視点が出てくるというものです。
さらに、価値の分解というのを提示しており、
「国際線ビジネス客が、飛行機に期待する価値」の論理的な分解
①現地の人と会って話す(という価値)
②現地の街や店など、現地を見る(という価値)
③現地を見て調査してくる(という価値)
…
というように分解ができれば、①については、音声通話システムやビデオ会議システムなども競合になります。
こういった価値を認識する能力、「マーケット感覚」がビジネスを行っていくうえで重要になっていくと述べています。なんとなく感じていたことではありましたが、良くまとまってます。
So Why?、抽象化
さて、ふとこれに似ていることを昔やったなと感じたのが、コンサル会社での論理思考トレーニング。その際に必ずでてくるのが、So why(で、なぜ?)を考えるというやつです。これは、先ほどでた価値の分解に似ています。
例えば、先ほどの航空会社の競合の話について、
「飛行機乗って海外にいく」
(So Why?なぜ)
①「海外の人とコミュニケーションを取るため」
②「知らない街並みを見て感性を磨くため」
みたいに考えます。次に、それぞれの項目について、逆にSo How?(どうやって)を考えます。
つまり、
①「海外の人とコミュニケーションを取る」
(So How?どうやって)
①-1 飛行機に乗って海外に行く
①-2 Skypeで会議を開く
といったように、①-2という飛行機以外の代替手段にたどり着きます。こういった思考を新規事業を考える際や業務プロセスの課題を考える際に行います。
これは、「ある問題を抽象化して具体化する」プロセスとも言えるかもしれません。(ちょっと定義があやしいですが。。。)
「飛行機に乗って海外に行く」というのを、抽象化(?)し、「海外の人とコミュニケーションを取る」方法を考えるという別のレイヤーの課題に移動します。
今度は、「海外の人とコミュニケーションを取る」ということに注目し、それを行う手段を具体化します。そうすると、当初対象としていた事象の代替が浮かび上がってきます。ここでは、「飛行機に乗る」の競合として、「skype会議」が登場しています。
ちなみに、この抽象化のプロセスは、「なぜなぜ分析」とかも近いかと思います。
どこまで抽象化するか、どれくらい具体化できるかといったことは、経験や感性などにも影響を受けるので、そのコンサルの良し悪しに関わってきたりします。先ほどの書籍にも「論理思考」と「マーケット感覚」の両方が必要とのべており、抽象化・具体化のうまい下手が「マーケット感覚」なのかもしれません。
(この辺はこちらの書籍によく書かれています。)
さて、こういった、抽象化、具体化といったプロセスがうまくできないと、コンサル会社では生き残っていけないのですが、そのあたりはまた次回。