日立が2万人の営業をコンサルタントにするという記事。
営業人員を2万人増やす。13万人の営業人員を活用し、従来の機器・設備販売から、AI(人工知能)やビッグデータ解析などの先端技術を駆使したコンサルティング型サービスの提供に経営の軸足を移す。
これを読むと、
「営業がコンサルなんてできるの?」
「名前変えてお金取るだけでしょう?」
など意見あるかと思いますが、個人的には「13万人!、そんな大量の営業をユーザー企業が養うのか!」という驚きがまず始めにきます。
営業のコストはどこから
さて、営業の人件費ってどこから出てるんでしょうか。営業だって従業員です。当然所属企業から給料はもらっています。そうなるとその給料の元は誰が払っているかというと、顧客、我々ユーザー企業から出ています。
しかし、ベンダーからの見積りに「営業人件費」なんて費目は見たことがないのではないでしょうか。ベンダーも役に立っているのかどうかわからない営業の人件費をさすがに直接的には請求してきません。(そんなもの見たら自分は払いませんが。)
こういった営業費用は、製品価格やSEコストの中に含まれているわけです。例えば日立の場合、
世界で約33万人という日立のグループ従業員のうち、営業人員は現在11万人。
なんと!!3分の1が営業なわけです。
そうなるとかなりの金額が製品やサービスに負荷されています。
例えば、日立はソフトウェア開発事業も行ってますので、そこに外注したとして、SEが月額200万円とったなら、その少なくとも10%~20%くらいは営業の人件費負担と考えてよいかと思います。
営業多くないか
そりゃ、ユーザー企業だってバカじゃないので多少の営業コストが乗っているのは理解しています。ただ、個人的には数%くらいじゃないかと思ってました。
例えば、外資コンサルなどは営業は基本コンサルタントが行います。コンサルタントは、当然コンサルティングを行う能力をある程度は持っており、加えてPMもやり、プロジェクトのデリバリーも行います。営業専属というのはあまりいません。
また、スタートアップでソフトウェア開発を行っていた際には、従業員の5%くらいしか営業はいませんでした。
そう考えると、33%というのは異様に多く感じるわけです。(まあ、日立になると業態も様々なんでしょうが)
なんにせよ、想定よりも大量の営業がおり、そのコストがかなりの割合でユーザーの知らないうちに知らない名目で負荷されているわけです。
営業は使い倒せ
これまでは営業にお願いすると申し訳なく感じていたわけです。
「営業にSE達の調整させて、PMみたいなことまでさせて申し訳ない」
「営業に現場設置を手伝わせて作業までさせて申し訳ない」
等々。
でもこれは間違いだったわけです。例えば、月間1000万円くらい払っているプロジェクトなら、100万円くらいは営業コストな分けです。その分使って当たり前です。
できないSEに対して、「金に見合った仕事しろよ」と思うと同時に、営業に対しても「金払ってるんだからそれだけの価値を出せ」と考えるべきなのかもしれません。
もし、営業をユーザーが使わなければどうなるのか。
その営業は他の会社のお手伝いをするだけです。営業は時間があれば他のユーザー会社に仕事を取りに行きます。新規顧客であれば当然そちらからはお金をもらっていないので、その営業のコストは既に仕事を発注しているユーザー企業が負担していることになります。
つまり、人の金使って、他の会社の提案書を作り、時には提案と称して無償でプロジェクトをサービスしたりしているわけです。それが競合他社なら、敵に塩を送っていることになります。
自分達が営業を使い倒さなければ、競合他社が人の金で特するだけなのかもしれません。
営業のいたれりつくせり
営業は使い倒せばそれなりに価値があります。ちょっとスコープから外れたお願いでも結構引き受けてくれます。特にメインベンダーならかなり無理言っても対応してくれます。
特に日系ベンダーは外資やスタートアップでは考えられないくらいに、御用聞きをしてくれます。それは当然、SEコストにその費用は乗っていますし、いつか大きな案件が売れれば取り返せるとみてサポートしてくれるわけです。そんなことはユーザーもわかっていますが、それでも営業のいたれりつくせりはすばらしく、どんどん骨抜きになっていきます。
かつては、ITベンダーの営業と言えば接待でユーザーのキーマンを骨抜きにして仕事を取っていたこともあったようです。(その時代はベンダー側なので経験したこもなく。。。)
しかしながら最近は、コンプライアンスの強化や利益率の低下もありそういった活動も見かけなくなりました。特に中堅・中小くらいの規模だとまず接待など受けることもありません。(ちなみに忘年会なんか割り勘です。。。)
そこで編み出した次の手段が、いたれりつくせりの営業サービスなのかもしれません。多少ユーザーが無理を言っても聞いてくれる。時には関係ない他社製品のトラブルも引き受けてくれるなど、ホント日本のおもてなし精神の塊です。
そして気づけば、こういった営業の努力により、我々は保守が大好きなユーザー企業になってしまっているわけです。もう、ベンダーの営業なくては生きていけないからだになってきています。
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