最近大学も学生に企業インターンシップへの参加を推奨する風潮があります。
ただ、インターンシップも様々で、進める側ももうちょっと考える必要があるかと。お国が勧めるのでとりあえずやっている大学にしてみれば、学生の労働環境なんか気にすることもなく、といった感じなんでしょうが。。。
やる気搾取ベンチャー
さて、とある理系大学生が就職相談をしたいということでランチしたのですが、その時現在行っているインターンシップの話を、目を輝かせながら話くれました。
「最近、XXXというスタートアップでインターンをやっているんです。」
「インターンですが、すごくやりがいがあり、自分はプロジェクト管理や営業もやっているんです。」
「最初に営業の提案などしたときは、全くろくなものがかけず社長に夜中の1時まで怒られたのですが、ほんと学生に自分のいたらなさを痛感したんです。」
と、かなり社会の荒波にもまれて苦労しているようです。
さらに、
「最近では自分で回った営業先の受注が決まるようになり、そのプロジェクトマネジャーもやらせてもらってます。」
「毎日、終電帰りですが、すごく勉強になってます。」
とのこと。本人の言うことを信じればかなりこの企業で成果を上げ、収益に貢献している模様です。
で、ちょっと聞いてみました。
「で、いくら貰ってんの?」
「無償ですよ。インターンですから」
「え??」
でた、やる気搾取ベンチャー。
そりゃお得です。優秀な学生が高いモチベーションでただで働きます。
ついでに
「で、どれくらいインターンしているの?」
「8ヶ月です」
「え???」
8ヶ月ただ。
「8ヶ月どれくらい通ってるの?」
「今、修士なんでそれほど講義もないので週3で言っています。」
すごい、1日10時間働くとして、
- 週30時間×32週 = 960時間
- 時給2000円として、960時間×2000円 = 1,920,000円
これはお得!
あやしい宗教みたいなもの
それでも本人は
「いいんです、これだけ勉強させてもらってるんで。給料なんて貰えません!」
ちょっとはまっているようです。本人は満足なようなので、それはそれでよいのですが。
でさらに続くのが
「社長がほんとすばらしい人なんです。」
素晴らしい人なら、学生相手でも価値を出した人間には正当な評価をするはずです。
こちらが
「おいおいおかしいよ。」
といったところで、そう簡単には洗脳はとけません。
「いやそんなことはありません!」
とむしろ思いを強くするだけです。
これはある意味、あやしい宗教に入ってしまった人々と同じ状況です。社長は教祖です。本人が信じきっているのを否定してもさらに信仰が深くなっていくだけで逆効果です。
ただ、この学生、
「社長からはうちに来て欲しいと言われているのですが、大企業からも内定を貰っており、いろいろ見るのもいいかなと迷っているんです。」
とのこと。
それならば、
「その会社もすごくいいと思うけど、実際大企業に一回行ってみたらどうかな。」
さらに
「どうせ大企業なんて仕事にやりがいがないかもしれないけど、それなら1年で辞めてそのスタートアップに戻ってみてはどうかな。」
「一度大企業で働いた経験は、そのスタートアップでも活きると思うな。プラスになると思うな。」
と、あくまで大企業に行くことで、やる気搾取ベンチャーのプラスになることを強調してみました。
おかげ様で内定のでている大企業に行きそうな感じにはなりました。恐らくやる気搾取ベンチャーに戻ることもなく、このまま脱会できるのではないかと。
もっとルールを決めるべき
大学や国ももう少し現状を知る必要があると思います。今やインターンは優秀な学生をただで使ういい口実になっている面もあります。自分が学生だったころにくらべ、報酬0でこき使う企業も多く、やる気搾取している企業も多々見受けられます。
少なくとも交通費は出す、就労時間は決める等しないと、立場が弱く、意識高い系の学生は簡単にやる気搾取されてしまいます。
ちなみに、ドイツの職業訓練学校はこういった点でしっかりルールが整備されているようです。こちらご参照。
こういうことを言うとスタートアップ礼賛の方々からたたかれそうですが、 やはり学生といえど、ある程度は正当な報酬を払うべきかと。
これ以上優秀な学生の時間・やる気が搾取されないことを祈っています。
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