ソフトウェア開発と言えばデスマーチですが(?)、なにもデスマーチはIT業界の限定ではなく、サービス業、小売業の現場でも頻繁に発生します。
ITだけがデスマーチではない
以前IT業界に身を置いていたこともあり、デスマーチはそれなりに理解しているつもりです。破たんしたスコープ、スケジュールの中で、現場SEのがんばりだけでプロジェクトを支え続ける、そんな現場を多く見てきました。
一番ひどいときは、客先常駐で、常駐先付近のビジネスホテルワンフロアを借り切って、仮眠部屋として交代で使うなんてこともありました。常駐先は家からわずか15分でしたが、帰る間もなく、ベッドメイクもろくにされない部屋で、シャワー浴びて、仮眠とってまたコードを書くというのを、半年くらい続けたことがありました。
まあ、今となってはお金のあるプロジェクトだったので、部屋を借りられただけましなのですが。。。(床でごろ寝なんてのもざらですし)
さて、こういったことに心底嫌気がさして、ユーザー企業に転職したのですが、ユーザー企業でもそれなりにデスマーチはあります。
例えば、小売業なら、新店舗のオープンなどは、多かれ少なかれデスマーチです。
店舗の引き渡しが遅れる。什器のサイズが合わずやり直し。店舗販売のITシステムの構築が間に合わない。商品の納品が遅れる等々、いくら精緻にやっても必ず予想外の事態が発生します。
特に、大型のショッピングモールへの出店とかになると、前段階のモールの開発が遅れたりすると、後工程の店舗開発は絶望的な状況になります。
それこそ、デスマーチが始まります。店舗もできておらず、スタッフのトレーニングもできない。結局自分が店頭に立って、オープン前含め1か月連続勤務等々、IT顔負けのデスマーチが始まります。
デスマーチが支える日本のサービス
ITの記事なんか読んでいても「海外の会社に行ったらデスマーチがなかった」といったことが書かれていることがありますが、このデスマーチ、日本が抜群に多いのかもしれません。
ユーザー企業に行って感じるのは、対顧客という視点では、日本企業のこだわりは尋常ではありません。
例えば、海外でスーパーなんか行くと、陳列がいい加減だったり、什器のサイズがあってなかったり、当然のように放置されていますが、日本ではまず見かけません。
それも、日本人はオープンの時から完璧を目指すのです。そうなると、わずかなミスでもゆるされずデスマーチに突入します。
ITでも完璧を目指したい
こういった対面サービスのビジネスでは、ITシステムが必ず関連しますが、こちらも完璧を目指します。カットオーバー直前になって不具合や、仕様変更が入り、人海戦術で対応するということもはいつものことです。
時には、プロジェクトが80%くらい進んだ時点で、大幅な機能追加を要望するも多々あります。大幅な機能追加が発生する多くは、顧客サービスの強化です。特にユーザー企業の上の方々が、
「こないだ海外のXXX見てきたらこんなサービスがあった。次の店舗オープンには入れて」
とか、
「競合では特殊な割引やっているので、うちもやるように」
など、オープン直前で当然のように言ってきます。中間管理職の抵抗など、竹やりで突っつくようなものです。
この要望は、ITベンダーへと押し込まれ、ITベンダーでのデスマーチに突入します。ここまでくるとユーザーもデスマーチなので、夜中3時にメールが飛び交う状況になります。
そもそもプロジェクトの設計が悪いんだ等々言われますが、先を見通すのには限界があります。ITベンダーにいるとわからないかと思いますが、外部環境の変化からもたらされるプロジェクトスコープ変更は、ほんと、現場ビジネスには大量にあります。
為替が動いた、政府の規制が変わった、海外から競合がやってきた、新しい決済手段が登場した、顧客からのクレームが入った等々、お客様ビジネスの現場では日々多様な変化に対応する必要があります。
そこで、「まあ、そりゃ無理だよね、お客さんに我慢してもらおう」という割り切りができれば、良いのですが、どうも日本企業はそうでないようです。
「お客様は神様です」
がいまだにしみついているようです。
この価格のサービスなら、そこまでのサービスはしなくてもよいのでは、というケースが大半です。ただ、そうは言いません。お客様は、安いコストでよいサービスを求め、それを受けるユーザー企業は、安い価格でサービスを提供し、その一方でベンダーにコスト削減の圧力をかけます。コスト削減圧力を受けたベンダーは、無理な費用、無理なスケジュールを、デスマーチで乗り越えます。
こうして、安くて高品質な日本のサービスができあがります。ITベンダーのデスマーチは日本品質を支えているのです。
ということで、たまにはITベンダーに感謝してみました。
(デスマーチにはまずこの一冊から)
デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか
- 作者: エドワード・ヨードン,松原友夫,山浦恒央
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