中堅企業IT部門の日常

中堅企業IT部門の中間管理職で半研究者の雑談です。毎週火曜日更新予定

開発に向くSE、保守に向くSE

 うちの会社だけかもしれませんが、ソフトウェアの開発はふつうのウォーターフォールでやることが大半です。アジャイルやらスクラムやらとは縁遠い開発をしています。 

 

こういった開発だと、「はい、ここまでが開発」、「この後は保守フェーズ」というように明確にフェーズが分かれます。

開発から保守に移行するにあたり、ベンダー側もある程度SEが残りつつ、保守メンバーに主体が切り替わっていくのが通常です。まあ、開発SEで保守をやらせるほど保守費を払っていないので、そういったことになるのかもしれませんが。

ただ、保守フェーズになるといきなり人が変わるということは、少なく開発SEから徐々に引き継ぎが行われます。

その際、開発までは輝いていたSEが、保守になると急に面倒な保守要員になったり、逆に開発時にはいるのかいないのかわからなかったSEが、保守になると印象がよくなったりすることがあります。

それは、開発フェーズと保守フェーズにおけるユーザー側の要求と、それに関するコスト・スケジュールの制約が大きく異なるからではないかと思われます。

 

開発フェーズ・保守フェーズで求められること

ます開発フェーズでは、

  • コスト・スケジュールが決まっている。たいていは、遅れると面倒なことになる
  • 要求とコストは強く結びついており、その点はユーザーも認識している

SE側に求められる資質として、コスト・スケジュールの管理は重要であり、ユーザーの要求に対して、「できないものはできない」、「スケジュール的に無理」とはっきり言うこともある程度評価されます。

ユーザー側としても、理路整然とリスク説明されればそれは納得し、そのSEについても一定の評価を行います。

 

一方、保守フェーズは

  • コストは大抵定額。終わりはなくシステムが稼働を続けるか、契約をやめるまで続く
  • スケジュールも緊急の障害を除けば、明確になっていないケースが多い
  • 要求とコストの結びつきは、それほど明確でなく、微妙なグレーゾーンが多数存在する

といった特徴があります。特に細かい作業についてのコストはあいまいで、例えば、「ミドルウェアのパッチをあてる」といった作業は、契約上は別請求になっていても、「他の深夜作業があるので、今回は無償であてておきます」といったことも多々あります。

保守フェーズというのは、結構契約があいまいなところもあり、ベンダーの担当者のさじ加減でかなりサービスがぶれたりはします。

ユーザー側も、開発フェーズほど切羽つまっていないこともあり、「XXXの機能不便なんだよね。これは瑕疵じゃない?」などと、緊急ではないけどあるといいなの要求を多々出してきます。

 

こういった状況で、開発フェーズのように、「それをやるのはスコープからはずれています」、「改修が大規模になりコストが必要です」等々やられると、ユーザー側からは反発を招くことが多々あります。特に保守になるとユーザー側から情報システム部門だけでなく、現場が参加することもあるので、こういったコメントは現場部門からかなり怒りを買います。(SEの言っていることは正しいのですが)

 

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Noから入ってYesと言う

各種プロジェクトを見ていると、開発フェーズでは、「Noから入ってYesと言う」SEが比較的評価されます。

「その機能はかなり影響範囲が広そうで、このスケジュール内では難しいです。」

というように先にリスクを示し、Noに近い回答をし、後日

「こういった制限をつければできないこともありません。」

と条件付きYesを出してくる。このYesは、必ずできる自信があるもので、全体のスケジュール、コストの要件をクリアできるものです。

実際に、プロジェクトの遅延なく、コストオーバーもなければ、ユーザー側もこういったSEを評価します。

 

Yesから入ってNoと言う

逆に保守フェーズでは、明確なスケジュール目標、コスト目標もない(保守の範囲いでやってくれという程度)要求が多くあり、そういったときは、「Yesから入ってNoと言う」SEが評価されます。

 

つまり、「ちょっと検討してみます。うまく担当を調整すればできるかもしれません。」という、Yesっぽい回答をし、後日、

「すみません、担当の調整がつかなかったので、一部しか対応できませんが、ご了承ください」というNoに近い返信をします。

結局、前日の「Noから入るSE」と同じことしかできなくても、最初の段階でのモメ度合いが大きく違います。

また、ユーザー側もそれほど強い思いの要求でないこともあるので、日がたって多少Noに近い回答が来ても、「そこまでやってくれるなら十分」とか思ったりします。

 

というように、開発フェーズと保守フェーズでは、SEの評価が変わるケースもままあります。特に、現場部門や、保守から参加したメンバーにとっては、開発イメージで参加したSEの行動は、かなり敵対的で杓子定規に見えるのは事実です。 

 

なんで、ベンダーさんも保守と開発でその辺を分けて対応いただけると、現場とのあいだに入るIT部門も楽になるので、ご検討いただければと。

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