前回ではクラウドソーシングでアンケート調査が増えており、マクロミルのようなWEB調査に比べて、安く早くできるので良いのではないかという話でした。
実際、日本の大手クラウドソーシングサイトの
こちででも、
例えば、
5年以内に正規雇用で有名企業、社員1000人以上の企業、外資企業にお勤め経験のある方にアンケートです。
というようなアンケートがタスク型のお仕事としてあがっています。
こちら、5つくらいの自由記入アンケートで、1000文字近く書いて、162円/1件です。
まあ、ふつうのアンケートに比べれば圧倒的に低コストです。
このように、安くて早いクラウドソーシングですが、本当にこれまでのアンケートの代替として利用できるのかどうか
当然、アンケート対象は偏っている
当たり前ですが、クラウドソーシングでとるアンケートは、インターネットに慣れた人々が母集団となります。
なので30代に限定して「skypeを使ったことがありますか?」と質問し、70%が利用していると答えたとしても、「なんと30代の70%がskypeを利用している!」といった言った示唆を出すことはできません。(よく一般紙なんかだとやっていますが)
また、リアルと絡めるような調査は向きません。「店員のサービスはどうでしたか?」とか、新製品のサンプリングなど。
ただ、これって、既存のインターネット調査と変わらないですよね。これまで、マクロミルとかでやっていた調査も同じような制約はあります。
既存インターネット調査と比べると
では、既存のインターネット調査と比べてどうなのか?
クラウドソーシングでアンケートを取るのと、一般的なWEB調査でアンケートを取ることで、結果が異なるのではないか。例えば、クラウドソーシングだと、働く人が多くて見る目が辛口になるのではないか?等々。こういった疑問は残ります。
実際に調査している人がいます。
ドイツの研究者(?)が行ったこの調査では、古典的なマーケティングの調査に関して、既存のインターネット調査で行った場合と、クラウドソーシング(Mturk)で調査した場合にどういった差がでるのかを検証しています。
こんな感じです。
調査内容:
最近クラウドソーシング(Amazon Mechanical Turk)を調査目的で利用することが増えてきているが、はたしてその結果は妥当なのか?既存のインターネット調査(COS: Conventional Online Surveys )と比較して異なるか。これについて、マーケティングの調査を両者に対して実施し、結果の比較を行う。
調査対象:
クラウドソーシング Mtukで集めた130人
既存のインターネット調査 身内で集めた130人
調査項目:
オンラインショッピング:eBay、オフラインショッピング:McDonaldsの両者についての評価を、MTurkとCOSの両者にて調査を行う。
(2×2 = 4つのグループ)
アンケートは6つのカテゴリについて、それぞれ複数の設問を設定。5段階のリッカートスケールで回答
- Perceived risk:リスクの認知 「この店で買い物をすると、多くのトラブルが起こりそうな気がする」等
- Positive word of mouth:前向きな口コミ 「この店について前向きなことを知り合いに話す」、「誰かにこの商品について聞かれたら、この店について進める」等
- Negative word of mouth:後ろ向きな口コミ 「知り合いにこの店を使わないように警告する」、「知り合いにこの店の文句を言う」等
- Customer orientation:顧客志向 「この店は顧客を公平に扱っている」、「この店は顧客の権利を重要にとらえている」等
- Commitment:コミットメント 「この店にとてもコミットしている」、「もしこの店がなくなったら、とても大きな喪失になる」
- Silent endurance:沈黙の我慢 「もしトラブルがあってもわざわざ言わない」、「この店に文句を言う価値もない」
結果:
MTurkの方が、「前向きな口コミ」、「リスクの認知」、「顧客志向」、「コミットメント」の値が高くなっている。
一方で、「売りロコミ」、「沈黙の我慢」については差がない。
となっています。つまり、ざっくり言ってしまえば、クラウドソーシングの方がより前向きな回答をするとのことのようです。
ちょっとご注意を
ちなみに、パッとみて気づくのですが、調査の対象がかなりいい加減です。特に既存のインターネット調査ということで選んだ対象は、学生が知り合いに声をかけるというやり方なので、結構問題があります。
実際、MTurkの対象者にくらべれ、既存インターネット調査の対象は、20代20%くらい多く、学生の比率がMTurkの5倍もあります。かなり偏っています。
また、MTurkは恐らく米国中心のワーカーだと思われるのですが、既存調査として選んだ対象は、知り合いベースで集めているので、ほぼドイツ人ではないかと。
こうなると、国籍の違いによる国民性の違いが出てしまう可能性もあります。例えば、MTurkは、米国人が多く前向きとか?
ということで、この調査自体は多少問題を抱えています。というかそもそも何を比べているのかよくわからない状況でもあります。
ただ、じゃあやっぱり使えないかというとそうでもなく、他の研究でも、クラウドソーシングと他の調査があまり差がない、もしくは、クラウドソーシングの方がより精度が高くなる(ゲーミングユーザーという遊びで回答する人を排除できる)という結果がでています。
ですので、多少の注意は必要ですが、トータルで見れば、既存のインターネット調査の代替として十分利用できるのではないかと。
続く。