外資系とか聞くとGoogleやFaceBookみたいなイメージで、
- 上下関係の少ないフラットな組織
- 20%ルールに代表されるような自由な風土
とか考えるかもしれませんが、それは決して一般ではありません。特に、上に対する絶対服従は、日本企業以上です。
会社につくしてなんぼ
先日読んだのがこちら、元ルイ・ヴィトンCEOの出世の道のりとその出世の極意(?)について書いた本です。
良くある自己啓発的な
”目標を設定して邁進しろ”
とか、
”前向きに願えば、必ず実現する”
みたいな感じではありません。どちらかというと、どろどろした会社でどうやって生き残っていくかをリアルに描いた書籍です。
例えば、はずれ上司にどうやって対応するかという話
組織人のキャリアは上司次第で大きく変わる。上司は君のキャリアを押し上げてくれる人物か否か、早々に見極めること。もし上司が「ハズレ」ならその職場はキャリアの階段のワンステップにすぎないと割り切って、学べるだけ学ぶこと。そして、そんな不利な境遇でも実力を発揮できる人間だと周囲に証明してみせること。
そう、上司が「アタリ」だろうが「ハズレ」だろうが、大きな成功をつかむ道はあるのだ―やりようさえまちがえなければ。
他にも、出世レースでどうやって勝ち残るかといった話
漫然と出世レースに参加するのは言語道断だ。不得意な分野で競争に挑み、昇進が途絶えた人間を私は大勢知っている。自分がトップになれる得意分野を見極めて、そこで勝負をかけること。
こういった、出世したい会社人間向けの話が満載です。いかに会社につくすか、いかに会社で成功するか。なんか、昔日本の会社人間がこうだったような気がするのですが、海外でも同じなようです。
そんな子供みたいなごめんなさいを
極め付けは、上司への謝罪。
著者はあるとき、上司から「重要な話がある」ということで、夜の8時電話会議に招集されます。
てっきり著者自身の昇進の話だと期待していたところ、そうではなくライバルが昇進し組織の体制が変更されるという話。
著者は、期待していた分カチンときます。そしてつい口に出してしまいます。
ふざけるな!夜の八時に電話しろっていうからかけたのに!俺の昇進はない?こんなバカげた話があるか!
ぶち切れです。相手は社長らしいのですが、結構言っちゃってます。それに対して、上司は冷静に
マーク、そう思うなら明日の飛行機ですぐに帰ってきたまえ。会って話そうじゃないか
要するに、明日クビにしてやるという意思表明です。
このとき、まわりでやり取りを聞いていた同僚から、「これはまずい」、「すぐ謝罪を」と言われます。
と言われても、自分だとしたらすぐには謝罪できません。「うるせぇ、やめてやる!」くらいな感じかとは思います。
しかしこの著者は、すぐさま電話を取り、上司にかけなおします。
自分も昇進できると勝手に期待していたのです。昇進したのはすばらしい人ばかりです。心から祝福します。どうか先ほどの無礼を許してください。
と、早急に謝罪して事なきを得ます。
でも、まあこんなすぐにこころを入れ替えて、子供みたいなごめんなさいが言えるところはさすが会社人間です。かつては日本企業で典型だった、上司に服従の会社人間ですが、いまや海外の方がより日本的なのではないかと。
日本企業なら、下手すると上司が気を使って、
「お前の気持ちもわかる、どうだ一杯飲みにいかないか」
とかくらいはやりそうです。そして、ブチ切れた部下も機嫌をなおして元通りという。。。
恐らく上下関係という点では海外の方が厳しいのです。一見フランクに会話していても、上司は絶対的な権限を持ち、人事権も持っています。昇進させるも首にするのも上司次第といったところです。外資系で昇進しようと思えば、原則絶対服従なわけです。
それは人事権を人事が持ち、その場の上司に嫌われても部署移動すればやり直せるといった日本企業とは恐らく違うわけです。
一応、いいことも言っている
ちなみにこの書籍、単に昇進の心得だけではなく、社会人としてどうあるべきか的なこともいくつか述べています。
力を貸してくれたすべての人たちに礼を尽くすことを忘れないように。不注意や非常識によってせっかく築いた人間関係を台無しにしてはならない。ビジネスの現場では無礼をたしなめてくれる親切な人間はいないと思ったほうがいい。だから無礼な人間は、自分がどれほどの信用とチャンスを失っているか、一生気づくことはない。
この著者、いきなりクビになったりもしているので、そらなりに人生経験も積んでます。なんでそれなりに含蓄のある言葉もいくつか述べられています。
出世したい人もそうでない人も、楽しめる書籍です。